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【冨沢薬局 冨沢道俊 先生 インタビュー】

2016/03/31

今は胸を張って言える。
“薬剤師って大変だけど楽しい仕事”
~処方箋ではなく一人ひとりの患者さんを見つめ続けよう!~



千葉県木更津市を中心に7つの薬局を展開する冨沢産業 冨沢薬局。そこで統括部長を務める冨沢道俊先生は、製薬メーカーでのMRとしてのキャリアを経て実家が営む同薬局に参加、2011年より在宅療養支援に従事している。冨沢先生のモチベーションの源泉は“人類救済”。1枚の処方箋ではなく、一人ひとりの患者を見つめ続けることがモットーだ。

冨沢薬局 冨沢道俊先生 経歴


略 歴 1979年生
平成17年


平成20年

平成23年


平成24年

平成27年
 
千葉県木更津市出身
第一薬科大学 卒業(九州・福岡)
株式会社ミノファーゲン製薬
東京支店勤務(MR職)
木更津市薬剤師会 会営かずさ薬局 勤務
兼 冨沢産業株式会社 勤務
千葉県薬剤師会 在宅医療委員会 委員
冨沢産業株式会社 統括部長 就任
在宅療養支援に従事、現在に至る
介護チーム・ラボ木更津に参加
木更津市立真船小学校 学校薬剤師
ヘルパーキャラバン参加
市民支援薬剤師連絡会PIG設立
所属学会 全国薬剤師・在宅療養支援連絡会(J-HOP)所属
日本在宅薬学会所属
日本褥瘡学会

外来だけでなく在宅も提供して初めて“薬局”として機能する

 冨沢先生は、製薬メーカーでMRとして3年間勤務した後、2008年に木更津市薬剤師会が営む薬局に転職、同時に実家である冨沢薬局の薬剤師も兼ね、2011年から同薬局の統括部長に就いている。MRから薬剤師に転身するきっかけとなったのは、「これからはいち薬剤師として、技能職として、成り立っていなければダメだと思ったから」だと言う。
 「私は2005年に薬科大学を卒業して製薬メーカーに入りましたが、その1年後に学校教育法が改正され、大学における薬剤師養成のための薬学教育が4年制から6年制に変更されました。早いタイミングから薬剤師としての経験を積んでおかなければ、6年制の教育を受けた後進たちとのギャップを埋められなくなると思いました。私には実家の薬局がありましたが、いずれ家業を継ぐにしても、いきなり経営者になるのはちょっと違う。薬剤師が足りないという状況もありました。まずはきちんとした技能を身に着けた一人の薬剤師として、成立していなければダメだと考えたのです」。
 しかし調剤薬局に転職して1週間後には「もう辞めたいと思った」という。
 「処方箋との戦いになってしまっていたのです。その環境下で患者さんの対応もしなければならない。狭い世界の中で“井の中の蛙”になっている気がしました。薬剤師が紙と悪戦苦闘しているだけで、患者さんは喜んでくれるのだろうか。何かを変えなければダメだと思いました」。
 そこで冨沢先生が目を向けたのが在宅療養支援だった。会社に在宅医療を提案し、その取り組みを開始した。
 「在宅医療を始めるに当たり、色んな医師やケアマネージャーの方、千葉県薬剤師会の人たちにも話を聞いて回る中で、通院するのが困難で困っている患者さんに出会ったのです。その時に“外来だけでなく、在宅も提供して初めて薬局として機能するんだ”と強く感じました」

在宅医療のノウハウは、患者と向き合う中で直面する課題から学ぶ

 在宅には外来とはまた違った知識やノウハウが必要となる。しかし在宅医療を始めた当初、冨沢先生は薬を配達して、患者と会話を交わすぐらいだったという。
 「でも在宅医療の本当の目的は、患者さんが薬をしっかり服用されて、きちんと効果が出ているかどうかを把握することです。もし医師が出した処方箋通りの効果が表れていないのなら、医師にも患者さんの状況を伝えて改善していく必要がある。そうしたことを教えてくれたのが、他ならぬ患者さんでした。始めは色々と知識も身に着けようと勉強していたのですが、何のために勉強するのか、この知識は一体何の役立つのかが明確ではなかったので思うように進みませんでした。そこで相対した患者さんに自分は何ができるのかをずっと考えていたのです」。
 例えば、出された薬がいつも残ってしまう患者がいたとする。
 「そこで“飲まなければダメですよ”と言うだけでは何の解決にもなりません。なぜ薬が残ってしまうのかを突き詰めて考えていく必要があります。1日3回という服用回数が多過ぎて飲むのを忘れてしまうということなら、夜飲む薬を朝に飲む薬と一緒に飲めば、飲み残しは無くなるのではないか。でもその時に本来の効能は担保されるのか。それを調べるために勉強する。患者さんと正面から向き合う中で直面する様々な課題を解決するために、必要となる知識を深堀りしていくのです。何とか患者さんのお役に立てるようになりたい。その思いが全てですね」。
 現在冨沢薬局では、ケアマネージャーや地域包括支援センターなどからの紹介もあり、在宅医療の依頼を受ける件数が、じわりじわりと増えてきているという。1日に訪問する患者宅は少ない日で10件、多い日には午後だけで15件を回ることもある。患者と向き合う真摯な姿勢が、在宅医療に携わる様々な人たちからも高く評価されている何よりの証拠だ。

地域活動に参加して人々の悩みを聞き、また薬剤師の育成にも注力

 さらに同薬局では、地域の人々と直接触れ合える場にも積極的に参加している。
 「私は老人会など地域の奉仕作業に参加させていただいたり、あるいは介護事業所が健康祭りなどを開催する際にお薬ブースを作らせてもらったりするなどして、地域の人たちとの交流を図っています。そうした活動を通じて、皆さんに在宅医療や介護に対する関心を少しでも高めていただくことができればと思っていますし、実際に我々の活動を見てご相談をいただくこともあります。また在宅医療をやりたいが、現状人手が足りなくてまだ始められないという他の薬局様から患者さんをご紹介いただくケースもありますね。基本的に我々はお断りはしない姿勢で、例えば抗がん剤のミキシングなど必要な設備がないご依頼にはお応えできませんが、それ以外のご相談なら地道に情報を調べたり、医師とも連携したりすることで対応させていただけると自負しています。それが我々の知識やノウハウをより高めることに繋がり、ひいては在宅医療を必要とされているより多くの患者さんのお役に立つことができると考えています」。
 一方冨沢先生は、世の中で活躍できる薬剤師をもっと増やすための取り組みにも注力している。
 「意識の高い薬剤師を育てることは、私の会社にとってだけでなく、地域全体にとっても非常に重要です。以前から年に約2回、自分で企画した勉強会を実施していたのですが、だんだん人が集まるようになり、最近PIG(ファーマシスト・イノベーション・グループ)というボランティア団体を設立しました。バイタルチェックの意義を理解し、必要な技能を習得することを目的に掲げており、参加資格は“困っている市民の皆さんのために活動しようという意識を持っている人”です。現在では若い薬剤師や薬局経営者の人たちなど総勢9名のメンバーがいます。もちろん各薬剤師会とも連携します。このPIGでの活動を通じて、医師との連携や看護師との情報共有が薬剤師の重要な役割の1つだという認識を持つ薬剤師がどんどん育ってくれば、それが“当たり前の薬剤師の姿”として世の中の人たちにも広く認知されるようになるでしょう。まだ端緒に付いたばかりですが、PIGを通じて、患者さんに薬剤師の存在を身近に感じていただけるような環境を作っていきたいと思います」。
 その活動の一環として、PIGではメンバーお揃いのユニフォームも作りたいとのこと。
 「カッコ付けていると思われるかもしれませんが、我々の姿勢や活動が本来あるべき薬剤師の姿だと世の中に認めていただけたなら、若い薬剤師の人たちに“PIGのあのユニフォームを着たい”と思ってもらえるかもしれません。我々だけがいくら頑張っても限界がある。必要となるのは人材です。理想とする薬剤師の姿を次世代に継承していくためにも、PIGではそうしたところまで意識して活動しています」。

今は子供に“薬剤師って大変だけど楽しい仕事だよ”と胸を張って言える

 熱い思いを胸に在宅医療に取り組んでいる冨沢先生だが、MRの頃には「何をやっているのか、自分で分からなくなった時があった」と苦笑いする。
 「当時勤めていた製薬メーカーは、売れない製品しか持っていない会社でした。そんな製品をどうやって売るかを考えることが目標なのは、寂しいと感じたのです。それで転職する際に米国の起業家でPayPalやスペースXの設立者でもあるイーロン・マスク氏の著書を読んで、マスク氏が謳っていた“人類救済”を自分のテーマにしようと決めました。実はMRを辞める時、私はIT系企業への転職も考えていました。日本がこれから本格的な少子高齢化社会を迎えるに当たって、実家に戻る前に、ICT(情報通信技術)の力で人々をどう繋ぐかを考えてみたかったからです。その時に手に取った本に書かれていたのが、“人類救済”でした」。
 冨沢先生は今「地域での1日1日の活動が、少なからず遠からず、人類救済に繋がっていると信じている」と続ける。

 「前人未到のとても長い道のりですが、大きなやりがいがあります。将来的には私たちが蓄積したノウハウを、国内だけでなく他の国にも提供することができると思っています。実は今の会社で在宅医療をやりたいと私が申請した時、揉めに揉めました。外来の人手が足りなくなるとか、負荷が増えるなどの理由からで、未だに“やらなければよかったのに”と言われることもあります。しかし処方箋とにらめっこしているだけの薬剤師に未来はありません。大きな目標を持って、迷わず、ぶれず、一歩一歩結果を積み重ねていくことが重要です。今後は“○○薬局だからいい”という時代は終わり、“薬剤師の○○さんがいい”という時代になるでしょう。1枚の処方箋ではなく、一人ひとりの患者さんを見つめ続けることが何よりも重要です。かくいう私も、以前は薬剤師という仕事にあまり自信を持つことができていませんでした。それこそ処方箋と格闘する毎日で、私にとって薬剤師は職業としての選択肢の1つに過ぎなかったのです。それが在宅医療を始め、多くの患者さんと向き合う中で、自分が何をすべきなのか、薬剤師は本来どうあるべきなのかということを教えていただきました。昔は次世代を担う子供たちに薬剤師になりたいと言われて、自信を持って“いいよ”とは答えられなかったのですが、今は自分の子供にも“薬剤師って大変だけど楽しい仕事だよ”と胸を張って言えるかなと思っています」。

必要な情報は自ら製薬メーカーから取り寄せ、足りない時にはDI室に電話もかける

在宅医療に限らず、外来の患者からも信頼される薬剤師になるためには、正しい知識をベースにした適切な薬剤選択が必要だ。そこで求められるのが医薬品に関する情報収集である。
 「まず薬剤選択の際には、例えばジェネリック医薬品なら患者さんが飲みやすいかどうかを確かめるために、実際に舐めて味を確認し、またしばらく放置して吸湿性を確認します。同じような薬なら大手メーカー系の製品を選択しますね。また老人会などに参加させていただいた時には、これから医療費が3割、4割と上がる中で少しでも薬の費用負担を抑えるために、今からジェネリックに替えておけば、お金の問題で飲む薬を削ることなく、今と同じ効能の薬を全て飲み続けることができますよというお話はさせていただいています。ただしジェネリックが適切かどうかも、結局は個々の患者さん次第なので、やみくもに全てジェネリックにということでは決してありません。医薬品に関する情報収集については、製薬メーカーのMRの方から資料をもらうのが第一で、あとはタブレット端末を常時持ち歩いていて、随時必要な添付文書を検索して目を通し、その薬に関係する患者さんに何か問題がないかをチェックするようにしています。それでも情報が足りない時には、インタビューフォームを確認したり、あるいは製薬メーカーのDI室に電話をかけたりして教えてもらっています。また製薬メーカーが開催する在宅医療をテーマにした勉強会の講師を引き受けることで、我々が在宅医療をやっているというPRにもなり、いち早く情報を持ってきてくれるようになります。患者さんに自信をもって薬をご提供するためには、正しい情報の裏付けが本当に重要です。そのための情報収集には、これからも務めていきたいですね」。
 

(取材日:2016年1月26日)