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【フクチ薬局 福地昌之 先生 インタビュー】

2016/03/07

患者さんを見つめていて湧き上がる思いは
“何とかしてあげたい、やらなきゃいけない!”
~ 薬剤師は“物”ではなく“人”を見ましょう ~



千葉市若葉区で1997年の設立と同時に在宅医療を開始したフクチ薬局。代表取締役で管理薬剤師の福地昌之先生は「当時はまだ在宅医療がほとんど認知されておらず、薬を届けるところからのスタートだった」と語る。そして今の若い世代に伝えたいことは、薬を見るのではなく、“人”を見ましょうということだと強調する。

フクチ薬局 福地昌之先生 経歴


紹 介 有限会社フクチ薬局
代表取締役
管理薬剤師
http://www.fukuchi-p.jp
所 属 千葉県薬剤師会 在宅医療委員会
千葉市薬剤師会 在宅介護委員会
全国薬剤師・在宅療養支援連絡会(J-HOP)
日本プライマリ・ケア連合学会
日本老年薬学会

これからの薬剤師には、豊富な知識に加えてコミュニケーション能力も求められる

 フクチ薬局設立の2年前、ある調剤薬局に勤務していた福地先生は、近隣の医療機関より在宅医療の患者宅へ薬を届けることを依頼された。その医療機関は在宅医療を行ってはいたものの、まだ院内処方で、診療専門外の薬を置いておらず、その薬の調剤を依頼されたことを契機に調剤薬局での在宅訪問が始まったという。当時はまさに薬を届けることが主業務で、その後、医療機関からの分業の話を受けて、福地先生はフクチ薬局を設立した。
 「薬局が在宅訪問を始めたきっかけは、患者さんが医療機関へ薬を取りに行くのは大変で薬を届けてもらいたいという要望があったからです。当時は在宅医療そのものが、まだまだ認知されていませんでした。その後、私は当薬局を立ち上げて調剤も始めましたが、2010年に一般社団法人の全国薬剤師・在宅療養支援連絡会(J-HOP)という団体が立ち上がります。在宅医療に携わる薬剤師間での情報共有を図り、勉強会や研究活動なども行う組織で、それまで長い間、在宅医療に取り組まれていた薬剤師の有志が集まり、自分たちの取り組みをもっと広めていきたいという思いで作られたものです。当薬局も設立当初より会員になりました。

 一方で千葉県内の高齢者の方の数が増えてきているという状況があり、それに対応できる薬剤師を育成しなければならないということで、千葉県地域再生医療計画に対して国から4000万円の予算が下りて、そのうち2000万円を薬剤師の養成や育成に取り組む事業として計画がたてられました。私が所属していた千葉県薬剤師会も携わることになり、そこで同薬剤師会の在宅医療委員会で200名の薬剤師を育成する予定で募集をかけたところ、2年間で約300名もの人が集まりました。実際のカリキュラムは、千葉県の薬剤師の方を対象に2年間で計6回、1回あたり2日間のプログラムで実施し、J-HOPから講師を招いて、在宅医療に関する講義やグループディスカッションなどを行うというものでした。その後は、一般社団法人日本在宅薬学会や日本プライマリ・ケア連合学会なども設立されて、そこから在宅医療に携わる薬剤師の数も徐々に増えていったと思います。

 これからの薬剤師は、単に処方箋通りに薬を調剤して患者さんにお渡しするだけでは成り立ちません。外部の研修や勉強会などにも参加して知識を増やし、患者さんが本当に困っていることを理解して、より良い解決策をご提案していくことが必要です。例えば現在、ポリファーマシーの問題などが叫ばれていますが、単に薬を減らせばいいというものではありません。どういう過程を経てその状態になったのか、そこには医師の考えもあるでしょうし、患者さんの希望があったのかもしれません。そうしたところまで把握した上で、“この薬は無くしましょう”と言える必要があり、さらにはその後の経過まできちんと見ていくことが大切です。色々な人とのコミュニケーション能力も求められるということです」。

アンケートや手製の日めくりカレンダーを提供して“何でも相談できる薬剤師”を目指す

 現在フクチ薬局では、福地先生を含む3名の薬剤師を中心に在宅医療に取り組んでいるが、在宅を始めた当初と比べて、患者に対する関わり方が全く変わってきたという。

 「最初は患者さんのお宅に伺って、薬をお渡して簡単に説明するだけでした。患者さんの状態を見極めるということはまず頭になかったですね。ただ色々な患者さんと接しているうちに、“これは患者さんの生活環境まで見なければ、本当の意味での在宅医療とは言えないのではないか”と感じるようになっていきました。

 また今までは服薬に関して、コンプライアンスという言葉が使われていました。これは医師の指示からの一方通行で患者さんに服薬してもらう状態で、次にアドヒアランスという言葉が使われてきます。患者さんにも理解をいただいて服薬してもらうという方式ですが、これも患者さん側からすれば不十分で、今ではコンコーダンスという言葉が登場してきました。服薬に関する患者さんの意見を十分に尊重して、その後に医師と患者さん、看護師、薬剤師が連携・協力し合い、合意の上で治療に臨むという状態です。

 例えば先のポリファーマシーの問題でも、患者さんがこの薬を飲めないのはなぜなのか、薬の量が多いからか、あるいは形が大きすぎるからか、これは医師には分かりません。それを助けるのが薬剤師の役目です。今後服薬支援に関しては、コンコーダンスの概念に大きくシフトしていくでしょう。薬剤師が果たす役割は、ますます重要になっていくということです」。

 その際に求められるのは、患者さんとの緊密なコミュニケーションです。薬剤師側から問いかけなければ、患者さんから何も答えは返ってはこない。

 「そのためには、何でも薬剤師に相談しても良いのだと思っていただく必要があります。その一環として2016年に入ってから、75歳以上の外来患者さんを対象に、薬の服用の仕方や薬の手帳の使い方などについてのアンケートを採り始めました。

その際の聞き方も、例えば“何か問題はありますか”という問いに対して“はい”と“いいえ”しか用意していなければ、皆さんは“いいえ”と答えてしまう。でも薬剤を取り出す時にカプセルが変形してしまうなど、細かいところで困っている患者さんがいるのを見ていると、こうした悩みまで吸い上げられるように、これからも工夫を重ねていきたいと思っています。

当薬局には月に約100名の患者さんがいらっしゃいますが、そのうちの約3割がアンケート対象者の高齢者の方ですね。在宅医療の患者さんに比べて外来の患者さんは帰った後にどうされているのかが分かりにくいので、その状態を把握するためにも重要な取り組みだと考えています」。

 一方、在宅医療の服薬不安定な患者に対しても、福地先生はいつ薬を飲めばいいかを記した手製の日めくりカレンダー(鹿児島県 原崎大作先生考案)を作って渡しているという。

 「J-HOPにはITに詳しい人(原崎先生)がいて、カレンダーを作成できるパソコン用のソフトを無償で提供してくれています。私はそれを使って、在宅の患者さんごとに薬の飲み忘れが無いように、朝、昼、夜のそれぞれに飲む薬を記した日めくりカレンダーを作成して、お渡ししています。これは患者さんだけでなく、訪問看護師や在宅ヘルパーの方からの評判も非常によく、例えば3日ごとに貼付する必要のある薬は、3日ごとにカレンダーに直接薬を張り付けておくこともできますし、また患者さんのお誕生日の欄には、お祝いのコメントも書いて差し上げたりもしています」。

若い薬剤師は自ら知見を広め、それらが有用かどうかを自分自身で判断して欲しい

 患者さんの視点に立って、様々な取り組みを行っている福地先生だが、一方で薬を調剤して出すだけの現状に甘んじている薬剤師も多い。こうした人たちが“何でも相談できる薬剤師”になるためには「薬剤師としての感覚を研ぎ澄ます必要がある」と福地先生は指摘する。

 「私は将来、薬剤師は更新制度にすべきだと考えています。確かに薬剤師は国家試験に合格しなければ取得できない資格ですが、“もう合格してしまったからいいや”という気持ちになり、その後の研鑽を疎かにしている人もいます。現在、ケアマネージャーは実務経験をしていないと更新が難しい時代に入っており、こうした仕組みは薬剤師も十分考えていかねばならないと思います。若い薬剤師の人たちは、多職種を交えた勉強会に参加するとか、評判のいい薬局の噂を耳にしたら話を聞きに行くとか、自ら動いて知見を広め、それらが本当に役に立つものかどうかを自分自身で判断していただきたいと思います。自分の薬局の外に出てみることが必要です」。

 また福地先生は若い世代に対して「まずは“物”より“人”を見ましょうということを伝えたい」と強調する。
 「薬学部実務自習の学生さんに服薬指導をすることがあるのですが、どうしても処方箋に目が行ってしまっている。確かに薬剤師は薬を扱う仕事ですが、本質的に私たちが見なければならないのは“患者さん”その人です。薬に目を向けるのは、患者さんを十分に知ってからでいい。人としての患者さんをよく見ていれば、お伝えしていい内容とダメな内容も分かってきます。また簡潔に説明を聞きたい方もいれば、ゆっくり聞いてきちんと理解したい方もいる。服薬指導の内容も全く違ってくるのです。今では薬剤師認定制度認証機構(CPC)が認証する認定薬剤師制度というものも出てきましたが、資格の取得自体が目的化してしまうのは、本末転倒です」。

医師とも連携してポリファーマシーに対処、モチベーションの源泉は“やはり患者さん”

 実際の現場で患者に適切な薬を提供するためには、豊富で正確な医薬品情報が必要となる。
 「例えば製薬メーカーからは、高齢者の方、中年層の方など患者さんの年齢層に応じた薬の提供の仕方などの情報がもらえると有り難いですね。当然ポリファーマシーの問題も関係してきますが、例えば、90歳を過ぎた患者さんでコレステロールの薬が出ている方がいますが、まだこの薬を飲み続ける必要があるのかと疑問に感じることがあります。あるいは血糖値も、『この年齢でこの値なら許容範囲』といった指標があっていいのではないかと思います。また患者さんによっては、完治を目指して副作用のある強い薬を出すのではなく、日常生活が楽になることに主眼を置いたケアのための薬をお出しするという選択肢があってもいいと思います。そうした基準があれば、とても助かりますね。実際に薬を患者さんにお出しする場面では、処方箋を見て、医師とも定期的に話し合いながら“これとこれだったら、この1つでいいですよね”という相談をして切り替えていくようにしています。これもポリファーマシーを解決するための取り組みですね」。

 フクチ薬局の設立以前から現在に至るまで、20年以上も在宅医療に取り組んでいる福地先生。モチベーションの源泉は「やはり患者さん」だと断言する。
 「患者さんの様子をきちんと見ていると、薬局は単に薬を出すだけの窓口ではないとつくづく思うのです。何とかしてあげたい、やらなきゃいけない。そういう思いが湧き上がってくるのです。患者さんに本気で寄り添うからこそ、自分たちのやるべきことも見えてくる。患者さんの笑顔が見られれば、それで私は全てが報われます」。

(取材日:2016年1月26日)