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【アイ調剤薬局 成井繁 先生 インタビュー】

2016/02/15

薬剤師は “薬物治療のジェネラリスト” であり続けよう!
そして “領域のスペシャリスト” を目指そう!
~ 原動力は患者さんの “ありがとう” ~



日本病院薬剤師会認定の「精神科薬物療法認定薬剤師」の認定を、“薬局薬剤師”として初めて取得した薬剤師が横浜市金沢区にいる。株式会社スリーアイの執行役員でアイ調剤薬局薬局長(管理薬剤師)を務める成井繁先生だ。地域の患者に寄り添い、患者の視点に立った対話を心がけている。

アイ調剤薬局 成井繁先生 経歴


略 歴 1989年3月
1989年4月


1998年7月
1998年9月

2002年6月
2002年7月




2007年1月

2007年2月

2015年4月
 
明治薬科大学卒業 同年薬剤師免許取得
第一製薬株式会社(現 第一三共)入社 名古屋支店配属。MRとして、開業医、大学病院、地域支援病院を担当
第一製薬株式会社退職
平安堂薬局入社。保険調剤、一般用医薬品販売、漢方薬相談などに従事
平安堂薬局退職
クインタイルズ・トランスナショナル・ジャパン株式会社入社。イノベックス事業本部配属 いわゆるコントラクトMRとして3社の業務に従事。途中、1年6ヶ月間、本社研修部署に所属。
クインタイルズ・トランスナショナル・ジャパン株式会社退職
株式会社スリーアイ入社 
アイ調剤薬局 薬局長就任
株式会社スリーアイ 執行役員兼任
現在に至る 
所属学会 日本臨床精神神経薬理学会会員
日本医療薬学会会員
日本地域薬局薬学会会員
認 定 ・精神科薬物療法認定薬剤師(薬局薬剤師として第一号)
・認定実務実習指導薬剤師
・日本アンチドーピング機構公認 スポーツファーマシスト

疑問を感じた“てんこ盛り”の薬を出す精神科医療

 京急金沢文庫駅から徒歩5分の立地にあるアイ調剤薬局。開設から約20年、1か月の処方箋枚数は約1200枚にのぼる。
 「同じ建物内に精神神経科と心療内科のクリニックがあるのですが、そちらの患者さんからの処方箋が当薬局の調剤の83%を占めており、残りの17%が近くの横浜市立大学附属病院や地域クリニックなど、月間約50の医療機関の患者さんからの処方箋です。つまり私たちの薬局では精神疾患の患者さん向けの調剤が8割以上で、何よりも患者さんの本当の声を聞くことを心がけています。それというのも一般診療の患者さんは早く薬を出して欲しいという方が多いのですが、精神疾患の患者さんからは“薬を渡されるだけで終わってしまうのは寂しい、薬剤師にもっと薬のことを聞きたい”というご要望がとても多いのです。そのためにパーテーションで囲んだ相談コーナーも設けて患者さんのプライバシーを守ることにも十分配慮しています」。
 成井先生には現職以前、大手製薬メーカーでのMRとしてのキャリアや他の薬局、コントラクトMRの会社での勤務経験があり、他の薬局にいた時に精神科に携わったが、その時の記憶が強烈に残っているという。
 「処方箋の用法と用量は厳守で、医師からも患者さんには服薬指導をしないでくれと言われていました。出される薬の量はてんこ盛りで、これが精神科医療なのかと、すごく疑問を感じたのです。その後の会社でMRに戻った時、ある精神科医に“精神科医療は今のままでいいのか?”という思いをぶつけたのですが、その先生は真面目に答えてくださり、“実はそれは確かに問題で、最近ではいい薬も出てきたので量を減らしていかないといけない”という話を聞くことができました。その後、私は当薬局に移り、1年後に精神科ができたのですが、クリニックの先生からも“薬局でも患者さんの話を聞いてあげてください”と理解を示してもらえたので、患者さんとコンタクトを取るようになっていきました」。

患者に寄り添い、ゼロから関係を構築していく

 しかし薬局の薬剤師には、患者の処方箋情報しか入ってこない。そこには診断名はおろか、症状さえ処方箋に書かれてはいない。
 「私たちに入ってくる患者さんの情報は極端に少な
のです。そのために患者さんとの関係をゼロから構築していかなければならない。どんな理由や症状で受診したか、医師からどんな診療を受けているのかを逆に聞いて、こういうことではないですかと解説して差し上げることもあります。特に精神科系では患者さんごとに症状が全く異なるので、一人一人の患者さんと密にコミュニケーションを取ることが本当に重要です。そこで当薬局では、患者さんが薬剤師に心を開いていただけるように、薬剤師が入れ替わり立ち代り服薬指導するのではなく、個々の患者さんに担当を決め、’’かかりつけ薬剤師’’を置くという取り組みをしています」。
 またアイ調剤薬局は、地域の在宅医療にも注力している。

 「まずは家庭の環境を乱さないようにすること、在宅の患者さんの場合、在宅医療が快適に思われるような形で対応させていただくことが大前提で、医師には遠慮して言えなかったことを聞いて差し上げるとか、だったらこんな薬がありますよと教えて差し上げるということをしています。そのような活動によって、患者さんにとって、治療における心や体の苦痛が和らいできたならば、“よかったですね”と患者さんに寄り添って差し上げる。ご来局いただく患者さんに向き合うスタンスと全く変わるものではありません」。
 さらに冒頭でも触れたが、成井先生は“薬局薬剤師”として初めて、日本病院薬剤師会認定の「精神科薬物療法認定薬剤師」の認定を取得した。一定の条件を満たした上で試験を受けて合格し、服薬指導症例審査を通過した薬剤師に与えられるものだ。
 「先にも述べたように、今の精神科医療には患者さんにお出しする薬の量が多すぎるという問題点があります。認定薬剤師は基本的な薬物療法を理解した上で、患者さんに対して適切な服薬指導を行うことができます。それが患者さんの不安や苦痛を少しでも和らげることに繋がります。私はそれができる薬剤師になりたかったのです」。

薬剤師はまず“ジェネラリスト”であり続けよう!

 成井先生は、横浜市薬剤師会の協力を得て、精神科の薬剤師がどういう思いかを調べたことがあるという。(平成28年1月17日開催・かながわ薬剤師学術大会で発表)
 「結果、95%の人が1回は応需したことがあると答え、さらにそのうちの91%が困った経験をしたことがあると答えました。理由は医師がどんな診断をしているのか分からない、そのため患者さんにどう接していいか分からない、というもので、まさに先にお話した通りです。これまではがん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病が日本の4疾病とされてきましたが、厚生労働省はここに精神疾患を加えて5疾病としました。それだけ国内で精神疾患の患者さんが増えているということです。それにも関わらず、不安を抱えたままの薬局薬剤師がいるという現状をいつまでも放置しておくことはできません。薬剤師の方が積極的に患者さんと向き合い、コミュニケーションを取っていこうと思えるような環境を作っていきたいと考えています」。
 そのため成井先生は、日本医療薬学会等、学会報告活動も精力的にこなしており、精神科に携わる薬剤師の意識向上や現場の改善に努めている。

 「やはり重要となるのは、多くの経験を積んで不安を打ち払うことです。勉強会にも参加するなどして、知識を積み重ねて行くという努力も必要ですね。私が精神科薬物療法認定薬剤師の認定を取得しようと考えたのも、まさにこの思いからで、専門性の高い薬剤師の認定を受けたことで、得られる情報も活かせる情報もたくさんある。我々薬局薬剤師は、地域医療の窓口で、薬については何でも知っているというのがあるべき姿です。その意味で薬剤師はまず“ジェネラリスト”で、処方箋無しで来られる患者さんに対しても、“それなら○○科のほうがいいですよ”というアドバイスができることが必要です。患者さんには“あの薬局に行ったら、まずは相談に乗ってもらえるよ”と思っていただくことが何よりも重要だと考えています」。

その上で“スペシャリスト”を極める!

 そして成井先生は「ジェネラリストを基本とした上で、この領域には強い薬剤師がいるという薬局の姿が理想的」だと強調する。
 「2015年10月に厚生労働省から『患者のための薬局ビジョン』という指針が発表されました。この中ではかかりつけ薬局や薬剤師のあるべき姿が明示されており、患者等のニーズに応じて充実・強化すべき機能の1つとして、“学会等が提供する専門薬剤師の認定等を受けた高度な知識・技術と臨床経験を有する薬剤師を配置”することが挙げられています。実はこれこそが、私が理想とする“ジェネラリストを担保しながら、専門性を発揮するかかりつけ薬剤師”のビジョンそのもので、今後かかりつけ薬剤師には、私が取得した精神科薬物療法認定薬剤師も含む様々な専門性の高い薬剤師の認定を得て、高度な服薬指導を行うことが求められるようになるでしょう。またそれができる薬局には大きな付加価値が付くことになる。そのためにも、全ての薬局や薬剤師の方は今すぐに準備を始めることが大事だと思います」。

患者さんの笑顔1つで、99の嫌なことも吹き飛ぶ

 ここまで紹介してきたように、成井先生には今の精神科医療をより良くしていきたいという強い思いがある。その拠り所となっているものは、一体何なのか。
 「患者さんが元気になって、笑顔で“ありがとう”と言ってくださることに尽きますね。それはお金には代えられないもので、また1年や2年で得られるものでもありません。3年、5年と患者さんと向き合うことで、初めて感じられる喜びです。99の嫌なことがあっても、患者さんの笑顔1つでそれらが吹き飛んでしまう。患者さんの笑顔が見たいというのが一番です。そのためには薬をお出しするだけでなく、患者さんのちょっとした変化に気付いて差し上げることです。例えば、’’今日はすっきりした良いお顔をされていますね’’と声をかけて差し上げることが大切です。またお話を伺っていくうちに、実はお医者さんには薬を飲んで眠くなったとか、だるくなったということを伝えていなかったということを聞く場合があります。その時には私たちが先生のところに行って“こんなことをおっしゃっているんです”ということを伝え、“じゃあこの薬は減らしましょう”という対応を取っていただいたこともありました。そこに薬剤師が介在する意味がある。

2016年4月には診療報酬の改訂がありますが、薬局は経済活動だけでは淘汰されてしまいます。経営者自身が考え方を変える必要がありますし、薬剤師も薬を渡すだけで、定時には帰りますというスタンスでは生き残れません。’’患者さんに寄り添うため何をするか’’ということを考えることが、何よりも重要です」。

(取材日:2016年1月19日)